海沿いで快適に暮らすために!塩害の基礎知識と対策を解説

海辺の家はその解放感やロケーションの良さから、以前から人気があります。これから家を持ちたいと考えている人の中には、ぜひ海沿いで探したい!という人もいるのでは?しかし海沿いで快適に暮らすには、海沿いならではの「塩害」に対する知識や注意点、具体的な対策が必要になります。

こちらの記事では「塩害」を受けやすい地域や建物を紹介しながら、塩害について詳しく解説。自分でできる塩害対策もあるので、家を手入れする際の参考にしましょう。

塩害とは

まずは「塩害」とはどのような被害なのかについて説明します。塩害は文字通り「塩分による被害や悪影響」のこと。海岸から近い場所では、海水が直接当たったり、海水が蒸発したりすることで塩分を含んだ空気が発生。塩分を含んだ空気が流れてくるせいで、建物や車、植物や洗濯物などに被害をもたらします。
そうした被害を総称して塩害と呼びます。塩害は具体的に私たちの生活に、次のような被害を与えます。

  • 建物の外壁や屋根にサビが発生する
  • 分電盤や電子機器の基盤が腐食する
  • 車や自転車がさびやすくなる
  • 植物が枯れる

建物の外壁や屋根のサビを放置すると、そこから雨水が侵入して内部の構造が腐食する原因に。また屋外の分電盤や電子機器が塩害の被害を受けると、内部の基盤がショートして火花が発生。故障するだけでなく、最悪の場合火災の原因にもなります。

潮風は気持ちよく感じる一方で、海水の塩分を含んだ風が、私たちの住む建物や車などにサビを発生させたり劣化が早まるだけでなく、火災が発生する危険があることを覚えておきましょう。
そのため海沿いで快適に暮らすには、塩害対策がとても重要になるのです。

塩害を受けやすい地域

塩害を受けやすい地域は、海からの距離によって次の3つの「塩害地域」に分けられます。海が家から見えるエリアはもちろん、海からある程度離れた場所でも塩害は発生します。自分の家がどの地域に当てはまるかをチェックしましょう。

  • 岩礁隣接地域:直接波しぶきが家屋に当たる地域
  • 重塩害地域:海岸から200~500m範囲内の地域
  • 塩害地域:海岸から2㎞範囲内の地域

基本的には海に近ければ近いほど、上記では上に行くにしたがって塩害の被害も大きくなるのが一般的です。
ただし空気中に含まれる塩分は強風によってかなり遠くまで運ばれ、海岸線の形状や風向、海抜などで飛来する塩分量が変わってきます。また近くに河川があるかによっても飛散距離が変わってくるため、上記の塩害地域の距離はあくまでも目安と考えましょう。

海が直接見えない場所で塩害の有無をチェックする場合は、「潮の香りがするか・しないか」で確認できます。外に出て空気を吸い込んだ時に潮の香りがすれば、空気中に塩分が多く含まれている証拠です。
同じような場所でも風の強さや風の向きによって、潮の香りがするかどうかが変わります。より詳しく確認したい場合は、時間帯を変えてチェックするといいでしょう。

塩害を受けやすい建物

建物の材質や種類によっては、塩害を受けやすいものがあります。海沿いの家を探している方は参考にしてください。

金属素材の部分

金属は酸素や水分に加え、塩分(塩化ナトリウム)があるとサビが発生しやすくなります。というのも塩分は空気中の水分を集めやすいという特徴があるため。集められた水分と空気中の酸素によってサビや腐食が促進されます。

建物の外壁や屋根にトタンなどの金属系素材を使用していると、塩害の被害を受けやすくなります。外壁や屋根以外でも、次のような金属製のエクステリアは塩害にさらされがちです。

  • 玄関ドア
  • 郵便ポスト
  • 窓サッシ
  • シャッター
  • フェンス
  • 看板
  • 電線や配電ケーブル

金属のサビを放置していると、いずれサビが原因で穴が開いてしまいます。外壁材や屋根材なら雨漏りの原因なる場合も少なくありません。さらに塩害による金属のサビが進行するスピードは、水分によるサビよりも早いのが特徴。したがって、雨漏りに気が付いたときには内部の構造部分にまで腐食が進んでいたり、最悪のケースではその家に住めなくなってしまうこともあります。

コンクリートの建物

意外に思われるかもしれませんが、コンクリート製の建物も塩害に弱いという特徴があるのをご存じですか?
もともとコンクリートの主原料であるセメントには、アルカリ性の膜を表面に形成することでサビにくくするという性質があります。しかし潮風に長期間さらされることで、コンクリートに含まれている塩分(塩化物イオン)が一定の濃度を超えてしまいます。そしてその塩分が少しずつアルカリ性の膜を破壊するのです。

そしてコンクリートには、腐食すると膨張するという性質があるため、膨張によって表面に少しずつヒビが入ります。そのヒビの隙間からさらに塩分が侵入してくるため、腐食が進むという訳です。

塩害によってヒビが入ったコンクリート製の建物を放置しておくと、劣化はさらに進むことに。後になってメンテナンスしようと思った時には、高額な費用が掛かってしまうことも珍しくありません。

高層階の家

沿岸の地域でなくても、高層マンションに住んでいる場合や、高台の建物には塩害の被害があることを覚えておきましょう。
日本では毎年のように台風が発生して、様々な地域に被害をもたらしています。台風のような強い風が吹くと、海沿い以外の場所にも海水の塩分が飛んできて塩害が発生する可能性があります。

風向きや地形にもよりますが、海から30~40㎞離れた高層階でも、塩害の発生が報告されるほど。周囲に風を遮るものがないと、塩分を含んだ空気が強風に乗って到達するためです。

外壁工事で塩害に強い建物に

すでに塩害の被害を受けた建物外壁の塩害対策として費用対効果が良いのは、より耐久性のある外壁材に替える方法と、塩害に強い塗料への塗り替えです。というのも塩害地域に建つ家の外壁は、それ以外の場所に建つ家の外壁よりも劣化が早いため、こまめなメンテナンスが必要です。

サビついた部分や塗装がはがれた箇所から劣化が進んでいくので、劣化する前の交換や塗り替えが必要に。こちらではおすすめの外壁材や塗料の種類を詳しく紹介していきます。

耐久性のある外壁材に替える

トタンなどの金属製の外壁材は、塩害の被害を受けやすくさびやすい特徴があります。より耐久性や耐塩性の高い材質の外壁材に張り替えれば、塩害被害を防止したり減少させられるはずです。
こちらは塩害地域の外壁材としておすすめの4種類の外壁材と、それぞれのメリット・デメリットです。外壁材を比較検討する際の参考にしましょう。

外壁材の種類 メリット デメリット
タイル 高耐久
高級感がある
価格が高め(5,000円~30,000円/㎡)
7~10年前後でメンテナンスが必要
ステンレス 塩害による腐食に強い
軽量
加工しやすい
材料価格が高め(12,000円/㎡~)
へこみやすい
バリエーションが少ない
ガルバリウム鋼板 金属性外壁材の中では塩害に強い
リーズナブルに導入可能
タイルや樹脂サイディングに比べると耐久性が低い
定期的なメンテナンスが必要
樹脂サイディング メンテナンスに費用が掛からない
塩害による色落ちがない
見た目が安っぽい
デザイン性が低い

塗装工事をする

塗り替えができる外壁材なら、塩害に強い塗料を使った塗装工事がおすすめ。また外壁が塩害の被害で劣化する前に、耐塩性や耐久性の高い塗料で塗り替えておけば、塩害予防にもなります。

こちらは塩害にも対応できる塗料の種類とそれぞれの特徴です。

塗料の種類 メリット デメリット
アクリルシリコン樹脂 塗装効果が長持ちする
防汚効果がある
変色しにくい
弾性がやや低くひび割れしやすい
知識や経験がないと扱いにくい
ポリウレタン樹脂 弾性が高くひび割れしにくい
材料価格が比較的安い
耐久性がやや低い
長い目で見ると割高
フッ素樹脂 耐久性や耐熱性が高い
防汚性や防カビ性が高い
光沢感が出せる
材料価格がやや高め
弾性が低め
下塗りなどの手間がかかる

施工業者の選び方

塩害に強い外壁に張り替える場合も、塗り替えをする場合でも、施工業者の選び方には慎重になりましょう。というのも塩害対策を伴うリフォーム工事には、専門的な知識や経験が必要なため。
外壁リフォームの経験があっても、塩害対策の経験がない業者を選んでしまうと、適切な対策ができずにすぐに外壁材が劣化したり、塗装が剥げる原因に。余計に費用が掛かってしまう可能性もあるため、塩害対策に詳しい施工業者を選ぶようにしましょう。

特に外壁は、家を塩害から守る大切な部分です。外壁に塩害対策を施すには、耐塩性能が高い塗料や、塩害に強い外壁材を適切に施工しなければなりません。実際に施工業者を選ぶ段階でホームページを確認したり、実際に問い合わせてみて、塩害対策の実績が豊富かを確認してください。

その他の塩害対策

海沿いの家の外壁を塩害から守るには、外壁の張り替えや外壁塗装だけでなく、普段からの手入れなどが大切です。こちらでは自分でもできる塩害対策について解説していきます。

こまめな掃除

金属部分や外壁が塩害で劣化するのは、表面についた塩分が付着したままでいるため。外壁やエクステリアの金属部分、サッシ窓など自分で水洗いできる部分は、ホースなどを使って洗い流すだけでも塩害による劣化のスピードを遅らせることができます。

水洗いする場合、特に外壁は高圧洗浄機を使ったり、ブラシでゴシゴシこすったりするとせっかく塗った塗料が落ちてしまいます。掃除をする際は柔らかいブラシを使い、優しく汚れを落とすようにしましょう。

外壁の掃除をするタイミングの目安は、半年~1年に1度程度でOK。定期的な掃除以外にも、台風が通った後や強風の後など海水の塩分が付着しそうなタイミングで掃除をするとより効果的です。

錆びるもの・電気機器を外に置かない

錆びやすいものや電化製品、電子機器などはなるべく外に置かないようにするのも塩害対策に効果があります。
特に電化製品は金属部分がほとんどのため、屋外に放置しているとサビの原因に。内部の基盤がショートすると火災の原因にもなるので、極力屋内に保管するようにしましょう。

室外機や換気扇の換気口など、どうしても屋外に置かなければならない機器は、海と反対側の軒下に設置すると、ある程度塩害を防げます。
また換気口には専用の「除塩フィルター」をあらかじめ設置しておくと、換気口を通して室内に入る外気から塩分だけを取り除いてくれます。

いかがでしたでしょうか?海沿いでの暮らしは注意が必要ですが、毎日海を眺められる生活は塩害を上回る魅力があります。塩害対策も検討しつつ素敵な暮らしを実現させましょう。

記事監修

林 貴之(宅地建物取引士)

宅地建物取引士の有資格者。戸建・マンション・新築・中古と幅広い不動産仲介を経験。「中古戸建・中古マンション・新築戸建・リフォーム・リノベーションなど様々ある選択肢の中から、お客様の想い描く理想の暮らしに合った住環境、長期的な暮らしの視点から最適な物件をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください」

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