神奈川県は津波が心配?どこまで来るの?対策はされている?

日本に住む以上は避けられないのが地震。海沿いの地域では津波のリスクもあります。
いずれ起こると言われている南海トラフ地震では、大規模な津波が想定されています。首都圏の中では、太平洋に面する神奈川県への影響が大きいと見られています。
この記事では、神奈川県の津波被害の想定と県の対策を中心に紹介します。神奈川に住んでいる方、これから住もうとする方はぜひご参照ください。
目次
神奈川県の津波浸水予測を知る
今、どんな地震でどれぐらいの津波が想定されているのでしょうか。まずは神奈川県が2015年(平成27年)、同県に大きな影響があるとされている地震の想定を元に作成、公表した「津波浸水想定」の概要を見てみましょう。
被害の大きいエリア
太平洋沿岸の15市町村で最も高い津波が到達するとされているのが、湘南地域西部の大磯町、二宮町(がけ地などを除く)。17.1mの津波が到達すると予想されています。
次いで三浦市や鎌倉市では15メートル前後、東京湾に面したエリアでは横須賀市の9.6メートルなど、かなり大規模な津波が想定されています。
最大クラスの津波が来た場合、浸水域の面積は東京湾側のエリアのほうが広く、川崎市は5分の1近い32.0㎢が浸水するという想定に。川崎市、横浜市、横須賀市をあわせた浸水面積は97.7㎢に達する見込みです。
主要エリアまでの津波到達時間
震源地が近いと、地震発生から短時間で大きな津波が到達する可能性があります。神奈川では、最大クラスの津波が到達するまでに、どれぐらいの時間がかかるのでしょうか。
地震の起きる箇所によって差はありますが、県西部では10分以内に最大規模の津波が到達すると予測されている地域が多いです。最も震源の遠い慶長型でも、1時間以内が予測されています。
横浜、川崎、横須賀エリアは、相模トラフ地震で2時間程度、慶長型地震(南海トラフ地震に近いモデル)では1時間~90分程度で到達するという予測になっています。
過去の地震で起こった津波
20世紀以降に限っても、神奈川県内でも多数の地震が起こり、何度も津波に襲われています。
大正12年9月1日に起こった関東大震災(最大震度7)は、相模トラフのプレート境界で起こった地震です。
11時58分に地震が発生し、早いところではそれから5分程度で津波が発生。熱海(静岡県)で12メートル、館山(千葉県)で5メートルの津波が到達したというデータが残っています。
神奈川県内でも、三崎で6メートルが観測されました。鎌倉付近でもかなりの高さになったと考えらえています。

出典:内閣府「1923 関東大震災報告書-第1編-」
(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai/pdf/1923–kantoDAISHINSAI-1_06_chap3.pdf)
昭和21年12月21日に起きた昭和南海地震は、南海トラフで起きたとされる最も直近の地震。マグニチュード8.0とかなりの規模で、房総半島から九州まで、太平洋沿岸の広い地域で1メートル以上の津波が観測されており、神奈川では横須賀(浦賀)で1.2メートルを記録しました。
東日本大震災(平成23年3月11日)でも大きな津波が発生。相馬(福島県)で9.3メートル以上、宮古(岩手県)で8.5メートル以上の津波が押し寄せ、甚大な被害が広範な地域で発生しました。

出典:気象庁「【気象庁技術報告】平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査報告」
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/gizyutu/133/CHAPTER2.pdf)
震源から離れた神奈川でも津波警報が発令され、実際に横須賀で1.36メートル、横浜で1.55メートル、小田原で0.94メートルの津波を観測しています。
海外で大きな地震が起こった際も、海を越えて津波が日本に到達することがあります。
昭和35年5月、南米のチリでマグニチュード9.5の巨大地震が起こったほぼ1日後、日本の太平洋沿岸部でも津波が発生しました。神奈川県内では川崎1.3メートル、横浜1.1メートルを観測。2010年にも同じくチリで起きた地震によって、0.2~0.4メートルの津波が記録されています。
危険な津波は何メートル以上?
数メートルの大きな津波はいかにも危険に思えますが、数十センチ程度でも実は大きな危険が潜んでいます。
津波が起こるのは、地震によって地面(海底)が動くため。風で表面だけが波打つのとは違って、海水全体が動いているのでそのエネルギーは大変強く、高さが0.2~0.3メートルぐらいでも流れに巻き込まれてしまう可能性があります。
また、津波が高くなるほど物理的な被害も大きくなります。木造の建物だと、1メートルの津波でダメージが発生し、2メートルを超えると全壊は免れないと言われます。
神奈川県で今後想定される地震
現在、日本で近い将来発生すると予想されている地震には、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、中部圏・近畿圏直下地震の4つです。
このうち、神奈川県では首都直下地震、南海トラフ地震の被害が懸念されます。
ただ、発生確率が低いと考えられている地震でも、絶対に起きないと言い切ることはできません。熊本地震(2016年)のように、起きる可能性は低いと見積もられていたにもかかわらず大地震が起きた前例もあるので、油断は禁物です。
神奈川県の地震・津波対策
神奈川県は平成27年に「神奈川県地震災害対策推進条例」を制定し、県民に備えを呼び掛けると同時に、建物の耐震化や津波避難施設の確保といった対策を進めています。
津波対策に絞って見ると、第1章で取り上げた津波浸水想定図を、県内24エリアごとにWEB上で確認することができます。
もっと細かく浸水想定を知りたいときは、住所で検索できる「e-かなマップ」を使ってみましょう。
また、特に浸水リスクの高い市町村で、警戒・避難体制を特に整備すべきエリア「津波災害警戒区域」を指定する取り組みも進んでいます。現在までに、6市町村が同区域を指定済みです。
万一の備え
地震や津波は、いつ起きるかわかりません。自治体等に頼るだけではなく、一人ひとりが普段から備えておくことが大事です。
事前の備え
地震でも津波でも、まずは避難することが大事。自宅や職場・学校の周辺にある全な避難場所、例えば高台や頑丈な建物を見つけておきましょう。
浸水リスクの高い地域には、海抜の表示や避難施設の案内が設置されていることもあるので、そちらも参考に。
避難するために必要な時間やルートも、あらかじめ調べておくのがベスト。地震によって建物が倒壊して道が通れなくなったり、時間がかかったりする可能性も十分にあるので、できれば避難先やルートは複数確保しておくことが望ましいでしょう。
また、非常持出袋の準備や、家具の固定も、すぐに避難できるようにするという意味でとても大事なことです。
実際に津波が起きてしまったら
もし大地震が起きた際、津波の被害を受けそうなエリアにいた場合は、とにかく早く安全な場所に避難してください。例え海沿いから距離があったとしても、河川のそばなどは海から津波が伝わってくるので危険。迅速に離れましょう。
地震の震源地や規模によっては、地震発生から数分で津波が到達することも珍しくはありません。荷物などを取りに戻ったりしないように。
近くに高台があれば高台へ。あるいは、RC造の丈夫な建物の、3階以上に避難しましょう。

出典:横浜市「津波からの避難に関するガイドライン」
(https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/tsunami/tsunami.files/0001_20180912.pdf)
3階建てより高い建物なら、上の階に行くほど安全です。また、海に向かって前面に他の建物がある建物のほうが、漂流物によるダメージを受けにくくなります。
なお、避難する際、車をむやみに使ったりすると混乱が発生して時間がかかり、高齢者など車でなければ避難できない人が逃げ遅れてしまいます。
避難は徒歩が基本。お互いに助け合いながら、安全な場所に移動してください。
まとめ
日本に住む限り、地震を完全に避けることはほぼ不可能ですが、津波はよりリスクの低いエリアを選べば、被害を受ける可能性を最小に抑えることができます。
もし、これから新たに住まいを探すのであれば、浸水が予想されるエリアを避けることが、何よりも効果的な津波への備えとなります。
自治体が公開しているハザードマップや地震・津波の被害想定などを確認しながら、住む場所・住まいを探すことをおすすめします。
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